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あけぼの・経営ニュース

vol.363 満期を迎えた生命保険契約の契約者と受取人が異なる場合

 いやー毎日暑いですね。外を歩いていると倒れてしまいそうな暑さです。水分補給をまめにし、失礼にあたらない程度の涼しい服装を心がけ、暑さを乗り切りたいものです。

 さて、今回は満期を迎えた生命保険金の契約者と受取人が異なる場合の取り扱いについて書かせていただきます。

 たとえば父親が保険契約者で、かつ保険料を負担しているものとします。そしてこの保険が満期を迎え、満期保険金を受け取ることになったのですが、受取人が息子だった場合、課税関係はどうなるのでしょうか?

 保険契約がいわゆる満期保険金ではなく、保険事故と呼ばれる死亡などによって支払われる契約の場合、保険契約者=保険料負担者=被保険者=父親で、受取人=息子であるときには、被保険者である父親の死亡によって保険金が息子に対して支払われるため、相続税の対象となります。ただ相続税の場合、生命保険金の非課税枠もありますので、結果として相続税額が課されるかどうかは、亡くなった父親の財産状況によります。

 一方、今回のように、保険が満期を迎えたことにより、一定の満期保険金を受け取る場合、それまで保険料を払ってきた人が父親で、満期保険金を息子がもらったら、いわば保険として積み立てたお金を息子がただでもらうわけですから贈与税の対象となります。このような課税を避けるためには、受取人を息子から契約者兼保険料負担者である父親に変更しておけば、父親は自分で払ってきた保険料の満期保険金を自分が受け取ることになりますので、課税関係は、父親の所得税の一時所得となります。

 一時所得の計算式は「受け取った保険金―支払った保険料―特別控除50万円」÷2ですので、所得税の一時所得になることによって、満期でもらった保険金から今まで支払った保険料を控除し、さらに特別控除50万円を控除し、その控除後の金額の半分だけが課税対象となる、というお得な形になります。このように、契約者と受取人が異なる満期保険金は、満期前に受取人を変更しておくことも対策の一つです。ちなみにこの受取人変更で新たな課税関係が生じることはありません。

 ところで、この生命保険の満期保険金等の一時所得の計算において、支払った保険料が『総額』かどうかが争われた最高裁判決があります。受取人以外の人が一部保険料を負担していた場合、その第3者が負担していた保険料も、この一時所得の計算で控除できるか、という点を争ったものです。結論としては、最高裁は「保険料の総額」とは、保険金の支払を受けた者が自ら負担して支出した金額をいうと解すべき、と言っていますので、当然に受取人自身が負担したものに限られるということです。当たり前と言えば当たり前なのですが、裁判によって法律解釈は固まっていくのですね。

2014年8月5日号(363号)

 このページは、佐藤典哉税理士事務所・株式会社あけぼの会計様が発行されている『あけぼの・経営ニュース』をちくナビ!でも読めるようにしたものです。掲載上、一部元原稿とはレイアウト等に違いがあることをご了承ください。

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