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あけぼの・経営ニュース

vol.350 相続対策の賃貸住宅経営

 1月中旬になると、クリスマスや大晦日などの「冬」をイメージするイベントが終わり、節分などの「春」を意識した行事が始まります。寒さはまだまだ続くとは言え、暖かい春の到来が待たれますね。

 さて、来年の相続税増税を前に、新聞や雑誌などで相続税対策としての賃貸住宅の記事が増えています。今回はこの賃貸住宅について書かせていただきます。

 相続税は、お亡くなりになった方の財産の総額が一定額(基礎控除など)を超える場合にかかります。この場合、財産がすべて現預金であればその合計額が財産総額になるわけですが、もちろんそんな方はおらず、不動産とか株式とか自動車とか家具とか、普通はたくさんの種類の財産をお持ちであり、それらすべてに金額をあてはめて計算するわけです。賃貸住宅の場合は間借りして住む人が居るわけですから、財産の金額算定(財産評価ですね)に当たっては、この人たちが持つ「借家権」を引いて計算します。

 たとえば、普通預金1億円はそのまま1億円の評価になりますが、仮にこの1億円でアパート2棟を建てると、居住者の借家権を引きますので、だいたい7千万円くらいの評価額になります。要は資産の種類を変えると、評価額を減らせるということですね。

 さらにこの1億円をまるまる借金すると、アパートという資産が7千万円増え、同時に借金という負債が1億円増えますので、差引3千万円を他の財産の金額から差し引けます。したがってほとんどの方は、銀行に借金をしてアパートを建てているはずです。

 ところで、賃貸住宅の「経営」という視点でこの相続対策を考えるとどうでしょうか?

 まず、アパートの家賃収入ですが、当然ながら新築時が最も高く、5年もすれば徐々に下げざるを得なくなってきます。建物は徐々に古くなっていきますし、アパート適地であればさらに近隣に新築アパートが建っていくからです。家賃保証は金額を保証するものではありませんから、保証を継続するには家賃減額の保証会社の提案を飲まざるを得ません。アパートは文字通り「不動産」ですから、競合アパートが増えたからといって簡単に移設もできませんし、家賃収入が減ったからといって毎月の借金の返済額も減りません。またさらに家賃が下がると、今度は銀行が金利を上げようとしてきます。金利は貸したお金を確実に返せるかどうかの銀行の「評価」ですので、当然家賃収入が下がれば、銀行も動きます。

 アパート建築の出口戦略として最も有効なのは、家賃収入から経費や返済額を引いた手残り額を使わないで貯金することです。仮に20年間手残り資金を蓄えれば、残った借金を一括返済し、その後の家賃収入を満額手取り額とすることも、アパートの売却も出来ます。目先の相続税対策だけでなく、「賃貸住宅経営」の視点が大切ですね。

2014年1月20日号(350号)

 このページは、佐藤典哉税理士事務所・株式会社あけぼの会計様が発行されている『あけぼの・経営ニュース』をちくナビ!でも読めるようにしたものです。掲載上、一部元原稿とはレイアウト等に違いがあることをご了承ください。

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