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佐藤会計タックスニュース

vol.238 自社による証拠づくり

 こんにちは。

 裁判員制度の開始が目前に迫ってきた感がありますが、そんな中、和歌山カレー事件の判決が出ました。ご存知のようにこの裁判は物証が極めて少ないなかで容疑者の「犯罪」を裁かなければならない点で、素人目にも大変難しく感じられます。

 「犯罪」があったとき、その場所には当事者以外は誰もおらず、従って裁判では「真実」を知ることなく有罪か無罪かを決めなければなりません。仮に物証がたくさんあっても、また多くの証人がその犯行過程を饒舌に述べても、犯罪を裁く裁判官が「そこにいなかった」という事実は覆せません。捜査の過程で「自白した」とか、裁判の中で容疑者が「自分がやりました」と言ったとしても、容疑者本人の心の中は分からないわけで、単純に本人が「やった」と言ったからやったのだ、とは断定できないということですね。

 映画やテレビで見る分にはなんてことはありませんが、実際に自分が裁判員として「本当に」その裁く側に立ったらと考えると、誰しも確信を持てない状況になるのではないかと思います。まして、軽い刑ならいざ知らず「死刑」や「無期懲役」などの判断を迫られ、しかも被害者や被害者家族の苦しみを目の当たりにしたら、極めて難しい判断を迫られることは間違いありません。

 とは言え、紆余曲折を経て出来た裁判員制度です。我々国民もしっかりとした態度で、責任をもって対応する必要がありますね。

 さて、証拠の重要さは企業取引においても同じで、その取引が行われた場所にはその取引を行った当事者しかおりません。顧問税理士も税務調査官もおりませんし、社員だけでその取引を行っていたとすれば、社長自身もその場所にはいなかったわけです。したがってその取引を表す経理処理について、会社はきちんと証拠を残しておく必要があります。取引そのものの証明は企業自らが為すべきものであり、だからこそ「証拠能力」が「備わる」ということですね。そしてその「証拠能力」をより高めるために、我々会計事務所が第三者的視点で「月次巡回監査」を行うわけです。

 自社によるきちんとした証拠づくりと会計事務所による取引事実の監査は、社内の内部けん制にも極めて有用です。経理部門のみならず他の部門においても、巡回監査によって過ちや、時によっては不正が発見されることも少なくありません。また常に外部からのチェックが行われるという心理的緊張感も、無用なミスを防ぐ効果につながります。月次決算書は社長の経営判断のために経営状態を表すだけではなく、その作成過程で様々な役割を担っていることをご理解ください。

2009年4月20日号(238号)

 このページは、佐藤会計事務所(所長・税理士 佐藤 典哉)様が発行されている『佐藤会計・タックスニュース』をちくナビ!でも読めるようにしたものです。掲載上、一部元原稿とはレイアウト等に違いがあることをご了承ください。

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