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あけぼの・経営ニュース

vol.340 中小企業倒産防止共済の解約返戻金

 今月から、このニュースのタイトルを変更させていただきます。

 新しい名前は「あけぼの・経営ニュース」です。従来通り様々な情報をわかりやすくお届けいたします。もちろん無料です。よろしくお願い申し上げます。

 さて、前回に続いて、中小企業倒産防止共済について書かせていただきます。今回は個人事業から法人になった場合の解約返戻金の不思議な(?)取り扱いです。

 中小企業倒産防止共済の解約返戻率は、掛金納付月数が12か月未満の場合=0円、12か月以上=80%、24か月以上=85%、30か月以上=90%、36か月以上=95%と漸増し、40か月以上になると掛金累計額の全額が返戻されます。

 また、この共済は個人事業者でも法人でも加入ができ、それぞれ掛金は必要経費または損金に算入でき、さらに個人事業者が法人成りした場合、中小企業者に該当するなどの一定の要件を満たせば、共済契約者の地位を法人に承継することができます。

 この法人成りに伴う承継時の時価は解約返戻金相当額によるものとされていますので、たとえば契約期間が10か月(月20万円×10月=200万円)の個人事業者が法人成りすると、この時点では掛金納付月数が12か月未満であるため、法人に引き継ぐ解約返戻金はゼロとなります。 一方その法人が、その後個人事業者の期間と通算して40か月になった時に解約すると、その法人は個人事業者の期間に支払った200万円も含めて全額掛金の返戻を受けることができます。

 個人事業の期間に必要経費に計上してきた掛金が、40か月後に解約すると法人のものになってしまうというのは、日本の厳格な税法には似つかわしくない矛盾に思えます。

 しかし、この共済契約はあくまで取引先の倒産等による貸倒れが生じた場合に共済金の貸付けを受けるための制度であり、その個人事業の期間に支払った掛金は、その貸付を受けるために支払ってきたものと言えます。また、個人とは税務上全く別である法人が、その後共済契約を継続するかどうかも、法人成りの時点ではわかりません。

 したがって結果として、貸付を受ける権利を行使することなく個人事業を廃業して法人になった場合には、その法人は、将来解約すれば戻ってくる掛金200万円をただで受け取ることになります。

 この「解約返戻金で評価する」制度は、理屈は通っても現実的には矛盾があり、そこを突いた節税効果をうたう商品もあります。たとえば最初の5年間は解約返戻金が極端に低い生命保険契約で、契約者が5年以内に死亡すると相続人はその生命保険契約を極めて低い解約返戻金で相続(節税ですね)し、その後5年を過ぎて相続人が解約すると急激に高くなった解約返戻金を受け取れるタイプなどです。研究が必要ですね。

2013年8月5日号(340号)

 このページは、佐藤会計事務所(所長・税理士 佐藤 典哉)様が発行されている『あけぼの・経営ニュース』をちくナビ!でも読めるようにしたものです。掲載上、一部元原稿とはレイアウト等に違いがあることをご了承ください。

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